サンダルを履いたり裸足になる機会の多い夏は、足裏やかかとの皮膚がいつもより厚く硬くなりやすい時期。さらに、外から受ける刺激が増えることにより「タコ」ができやすくなります。タコはほとんど自覚症状のない皮膚の病気のひとつですが、見た目に美しくないだけでなく、悪化すると出血したり痛みが出ることもあります。 今回は、足裏にできてしまったタコのケアと治療法についてお伝えします。
タコ・胼胝(べんち)について
タコとは
皮膚の角質層が増殖して極端に肥厚した皮膚病のひとつ。医学的には「胼胝(べんち)」と呼ばれています。皮膚は同一部位に機械的な圧力や摩擦、衝撃などの刺激を繰り返し受けると皮膚を守るための防御反応が働くため、皮膚の表面(角質層)が角質化して、徐々に厚く硬くなっていきます。その状態がひどくなったものが「タコ」です。靴がよく当たる部分や足の指、指のつけ根辺りが赤く腫れたり皮膚が硬くなっている場合はタコの初期段階ともいえます。 主に、体重がかかり、靴による圧迫や摩擦、衝撃を受けやすい足の裏や足の指のつけ根、かかとなどにできることが多く、足や靴の形、歩行の癖によってはつま先や指の間、指の上側など靴との摩擦を生じる部位にできることも。また、足裏以外にもペンダコや座りダコなど、生活習慣や職業、癖などにより、身体の様々な部位にできます。
タコの主な症状
皮膚が厚く硬くなった部位は淡黄色になり、楕円形に隆起していきます。ザラザラとした手触りで、慢性化すると表面が乾燥して白くなったり、他の皮膚と比べさらに硬く、白く盛り上がることもあります。 角質の増殖は皮膚の外側に向かって厚く硬く盛り上がるため、皮膚の感覚が鈍り、痛みなどの自覚症状はほとんどなく、あっても軽いものですが、大きな場合は痛みを伴います。また、長時間歩くなど足裏を酷使したときは、炎症により痛みを感じたり、さらなる摩擦などで悪化して皮膚に亀裂(ひびわれ)が生じ、出血したり強い痛みを伴うこともあります。
タコができる原因
- 足に合わない靴を履いている
- 開張足(かいちょうそく)、扁平足、外反母趾、ハンマートゥ、巻き爪、内反小趾(ないはんしょうし)など、足に特徴がある
- 歩き方に癖がある
- 特定の職業やスポーツなどの習慣
- 身体の歪みや癖
- 足の角質がたまっている
- 足の冷えや血行不良による足裏のターンオーバーの乱れ
- 動脈硬化や糖尿病など特定の病気
他の病気との違い
タコに似た病気として、ウオノメ(魚の目・鶏眼/けいがん)やウイルス性のイボ(尋常性疣贅/じんじょうせいゆうぜい)などがあります。 ウオノメはタコと同じように皮膚の一部が刺激を受けて角質層が厚くなる病気で、できる原因も治療方法もタコとほとんど同じですが、タコは角質層が外側に厚くなっていくのに対し、ウオノメは角質層が真皮(深層)に向かって厚く突起していくため、外部から刺激を受けると痛みを伴います。ふたつを見分けるには芯の有無を確認します。タコには芯がありませんが、ウオノメには硬くなった皮膚の表面中心に丸い芯があり、それが目のように見えるのでウオノメと呼ばれています。 一方、ウイルス性のイボはウオノメとよく似た見た目で、全身にできる可能性があります。素人には見分けが難しいため、確実な判断は皮膚科などの医療機関で診断を受けるしかありません。足裏の場合、土踏まずなど刺激がかからない部位にタコができた場合は、ウィルス性のイボの可能性が考えられます。
タコのケアと治療方法
痛みがあまりなく軽い症状の場合はセルフケアも可能です。早めにケアをして悪化を防ぎましょう。
症状を緩和・改善するセルフケア
市販の保護パッドを使用する
薬局などで売っている保護パッド(タコ用の絆創膏)は、患部に貼っておくとタコが柔らかくなり、ターンオーバーとともに自然にはがれやすくなります。同時に、靴によるさらなる圧迫や摩擦から皮膚を保護し、悪化を防ぎます。
保湿によるセルフケア
角質ケアと同じように、タコも保湿を十分に行うことで乾燥が緩和し、状態が和らぎます。入浴後や外出前に、ボディクリームなどで保湿を行い、角質(タコ)を柔らかくしましょう。また、コットンに保湿用のローションや美容液を染み込ませて患部に当て、10分ほどパックするのも効果的です。
専用のカッターでタコを除去する
セルフケアでタコを除去するときは、市販のコーンカッター(タコ専用カッター)を使用します。お手入れがしやすいよう、事前にフットバスで足を洗浄し、角質が柔らかくなったら厚くなったタコをカッターで削ります。仕上げにスクラブ剤で皮膚の表面を滑らかに整え、ぬるま湯で洗い流し、しっかりと保湿をすれば終了です。 ただし、自分で簡単にできるこの方法は、雑菌などによる炎症の可能性など、衛生面での心配や、削りすぎによるタコの悪化などリスクを伴うことも。セルフケアが心配な方は、フットケアサロンでプロのケアを受けるほうがよいでしょう。
皮膚科での診断と治療
セルフケアが難しそうなときや保護パッドなどで改善しないとき、痛みがある場合は、すみやかに皮膚科など専門の医療機関を受診して、タコの状態に合った適切な治療とアドバイスを受けましょう。特に、痛みや赤みを伴う場合はウイルス性のイボの可能性があるので早急な受診が必要です。 軽度のタコは、塗り薬や絆創膏、スピール膏により角質層を軟化させ、削り取ることで治療します。痛みがひどいなど重度のものは、手術で取り除いたり、薬による除去法などで処置します。場合によっては、骨や関節の異常に対して整形外科的手術を行い、歩行に対する治療や矯正をして、根本的な改善を目指す場合もあります。 また、糖尿病で神経障害や血流障害がある場合は、重篤な感染症を引き起こす可能性があり、重症化しやすいので、積極的な治療が望まれます。
タコの予防・再発防止について
皮膚への継続的な刺激を解消しない限り、一度治っても再発しやすいのがタコです。タコの再発を防止し、新たなタコができるのを防ぐには、タコのできる要因を可能な限りなくし、摩擦や圧迫、衝撃などの刺激から皮膚を保護したり避けることが大切です。
日常生活で見直すべきポイント
- サイズや形など自分の足に合った靴を履く
- 底の薄い靴を避ける
- ハイヒールなど、極端につま先や足の前側が圧迫される靴を避ける
- 衝撃を和らげる柔らかい中敷き(インソール)を使用する
- 裸足は避けて靴下を履くようにする
- タコができやすい場所に保護パッドを貼る
- 歩き方、立ち方を見直し、体重が局所的にかからないようにする
- 毎日足を洗い、足裏に角質をためないようにする
タコをつくらない靴選び
タコができる原因のほとんどは、足に合わない靴を履いていることが挙げられます。最後に、タコができやすい靴の特徴と、靴選びのポイントをご紹介します。
タコができやすい靴とは?
サイズ、足の形(幅)が合っていない
合わない靴を履いていると、一箇所に圧力や刺激が偏り、タコができやすくなります。小さめの靴は足の指やつけ根などが靴に当たり圧迫され続けます。大きめの靴や安定性のないゆるい靴も足が靴の前側へと滑ってしまい、やはり指やつけ根の辺りが圧迫されます。 また、どれだけ縦のサイズが合っていても、横幅が合っていなければ足には大きな負担がかかります。きれいに見える細身の靴は、靴幅が狭く、指のつけ根やつま先がをきつく押さえられるため、指が両側から圧迫されることで摩擦が起こり、指にタコができやすくなります。
底が薄い
靴の底が薄いと地面から受ける衝撃が大きくなるため、足の裏が圧迫され、広範囲でタコができやすくなります。
ヒールが高い
ヒールが高い靴は指のつけ根の横ラインに大きな負荷がかかります。特に、タコのできやすい足ともいわれている開張足の方はより刺激を受けやすいため、注意が必要です。
靴選びのポイント
- 両足とも試し履きをして、きつくもゆるくもないものを選ぶ
- 履いて歩いた時に、つま先やくるぶし、かかとなどに当たるところがないかを確認する
- 価格やデザインよりも、履きやすさを重視する
- 足の指が5本とも圧迫されずにまっすぐ伸びた状態になるものを選ぶ
- 底が厚くクッション性のある靴を選ぶ
- 土踏まずが浮いたり靴のアーチがきつすぎず、土踏まずと靴のアーチがフィットするものを選ぶ
- ハイヒールの場合はインソールを前半分に入れることを想定し、若干大きめのサイズを選ぶ
- 足は、午前中は小さく、夕方になるとむくんで大きくなるため、昼頃(13時~15時)の足のサイズに合わせて靴を選ぶ
- 自分の足に合う靴がわからない場合は、シューフィッターのいる店で靴選びの相談をする
おわりに
タコは、必ずしも除去や治療が必要なわけではありませんが、一度できるとなかなか完治しないため、早めの処置が大切。普段から自分の足に合った靴を履く、毎日の足洗いと保湿で角質ケアを行うなど、タコができないよう改善・予防を心がけ、夏でもきれいな素足を保ちましょう。