夏はたくさん汗をかいたり、クーラーで過度に体が冷やされたりと、体のあらゆるところで血流が滞りやすい時期。血流が滞ると全身の血行も悪くなり、様々な不調を招くことになります。症状がひどくなると、命に関わる病気の原因になってしまうことも…。
今回は、日々の生活習慣を見直すことで美容や健康面での悩みを解消する、血流改善の方法をご紹介します。
血液と血流
血液は全身の細胞に栄養と酸素を運び、不要な老廃物を回収するという、人間の生命維持活動において重要な役割を担っています。そこで大切なのが、血の巡り、血流(血管内での血液の流れ)です。体が冷えることにより血管が収縮して細くなってしまったり、血液の粘度が高くドロドロの状態になり血流が悪くなると、全身の細胞に栄養や酸素が行き届かなくなり、結果、体に様々な不調が起こります。
特に女性は脂肪が多く筋肉量が少ないため、基礎代謝が低く冷えやすく、男性よりも血液の循環量も少ないため、血流が滞りやすい傾向にあります。さらに血流は女性ホルモンの分泌量とも密接な関係があるため、女性は血流悪化によるトラブルが起きやすいといわれています。
血流が滞る要因
血液の巡りが悪くなる原因は様々ですが、多くは日々の不摂生などの生活習慣にあります。まずはご自身の生活習慣を見直してみましょう。
運動不足
筋肉には心臓と同じように全身に血液を巡らせるポンプのような働きがあります。人間の体は筋肉を動かすことによって毛細血管の隅々まで血液を循環させているため、体を動かさず筋肉を使わずにいると、血流が滞ります。
食生活の乱れ
外食やインスタント食品などの偏った食事で必要な栄養素が不足したり、甘い物や冷たい物などで体を冷やすと、血液の粘度が上がってドロドロになり、血流が悪くなります。
ストレス
ストレスは血液循環をコントロールする自律神経の働きを鈍らせたり、血管を収縮させる働きのあるストレスホルモンを大量に分泌し、血管を狭くし末梢血管の血液量を減少させる原因となります。
夜更かしや睡眠不足
交感神経が優位に働いていると血管が収縮するため、連日の夜更かしや睡眠不足などでも血流は滞りがちになります。
血流悪化によりあらわれる症状
血流が滞ると体に様々な悪影響が出始めます。特に、女性を悩ますトラブルのほとんどは血流の悪さが原因になっているとも言われています。
肩こり、首こり、腰痛など
血流が滞ることで起こる不調の中でも多いのが、肩、首のこりや腰痛。血行不良になると必要な栄養や酸素が全身に行き渡らず、筋肉が酸欠状態になります。この状態で筋肉に負担がかかると老廃物や疲労物質が蓄積していき、肩こりや腰痛などの症状としてあらわれます。
冷え性、手足の冷え
冷えも血流が滞ることによって起こる代表的なトラブルです。体が体温を維持できるのは代謝によって温められた血液が全身を巡っているため。けれども、血流が滞ると細胞の新陳代謝が行われず体が熱を作れなくなったり、血液が全身を巡る前に冷えてしまい、体温調節ができなくなります。そしてその部位の温度が低下し、手足の先などには十分に血液が行き渡らず、末端が冷えを起こします。
また、冷えた部位の血液は温度が下がって粘度が増します。血液はドロドロとした状態の低い温度で全身を巡るのでさらに体は冷え、血管は収縮、詰まりがちになり、ますます血液の巡りが悪くなるという悪循環に。
肌荒れ、肌トラブル
血流が悪くなると、肌に必要な栄養や酸素が十分に行き届かなくなったり、老廃物の排出が滞ります。これによりターンオーバーが乱れ、肌荒れや乾燥、くすみ、クマなどの肌トラブルが起こります。
太りやすい体質になる
血流が滞ると体の基礎代謝が悪くなり、体内の老廃物が脂肪となって蓄積されてしまいます。体内の脂肪分解酵素の働きも低下し、太りやすい体質に。
様々な疾患
血流が滞り全身の血行不良が進行すると、血管に老廃物がたまり、狭く詰まりやすくなります。その結果、頭痛や慢性疲労、不眠などに始まり、糖尿病、高血圧、不妊症、認知症や、心筋梗塞や脳梗塞など命に関わる病気になるリスクが高まります。
血流を改善する方法
血流を改善すると、体の疲労や不調を緩和・回復し、血流の悪化により起こる未病を予防することもできます。血流を改善するには、血流を悪化させる原因を断ち切るとともに、健康な血液作りを意識することが大切。まずは十分な睡眠、栄養バランスのとれた食事、定期的に体を動かすといった規則正しい生活を心がけることから始めましょう。
食生活を見直す
血流を正常に維持するためには、日頃から甘い物や冷たい物など体を冷やす食べ物を控え、体を温め血流を促す効果のある食べ物、血液をサラサラにする作用のある食べ物などを中心に、タンパク質やミネラル、ビタミン類などをバランスよく摂取することが大切です。
血流改善に効果のあるビタミンC、ビタミンE 、EPA、DHA、パントテン酸などの栄養素を含む食材を積極的に摂るのもおすすめ。
また、体内の水分不足も血流悪化の原因になります。汗をかくと血管内の水分も失われ、血液の粘度が増して血流が滞りやすくなるので、特に夏場はコップ 1杯程度の水をこまめに飲んで、水分補給をするようにしましょう。
運動を習慣にする
運動をして筋肉を使うと、全身の血流が活発になるほか、体温の上昇を促すことで血流量が増加します。
ウォーキングやジョギング、サイクリング、水泳などの有酸素運動は、血流を促すだけでなく、年齢と共に衰え減少していく毛細血管を再生したり新たに増やしたり、発達させるのに有効です。また、有酸素運動をすることにより発生する一酸化窒素には、血流が滞る原因となる血管の収縮や、血液をドロドロにする血小板の凝縮を防ぐ作用があります。
一方、筋肉には血流を補助する働きがあるので、スクワットや腕立て伏せ、腹筋などの筋力トレーニングで筋肉を鍛えることも効果的。特に、血流量の多い脚の筋肉を鍛えると全身の血流が良くなります。
ストレッチやマッサージをする
筋肉は動かさないと次第に硬くなり凝ってしまい、血流を阻害します。そのため、ストレッチでしっかりと筋肉をのばしたり、マッサージで筋肉のコリをもみほぐすことでも血流を促すことができます。特に冷えやすく血流が滞りやすい首や肩、ふくらはぎなどは身体が温まっているお風呂あがりなどにケアをして、さらに効果を高めるとよいでしょう。
姿勢を良くする
猫背など身体の歪みより筋肉がこってしまうことでも血流は滞ります。筋肉の大きな歪みは血管を圧迫することも。また、長時間同じ姿勢でいることも血流悪化の原因となるので、こまめに体を動かしながら、常に正しい姿勢を意識しましょう。
血管マッサージで血管の歪みを正す
肩や腰、手足の指先など、血流が滞りやすい部位は加齢や日常のクセなどによって、血管が歪みやすいと言われています。特に指先など末端の毛細血管は非常に細いため、歪みが生じやすく血流が滞りがちです。
歪みを正し、収縮した血管を元に戻すには血管マッサージがおすすめ。手や器具などを使って適度な刺激を与えることで徐々に改善されていきます。特に、心臓から一番遠い足先は毎日ケアしてあげると効果的です。
体を温める
日常的に体を温めるとともに、体を必要以上に冷やさないよう意識することも大切です。身体が冷えると血管には老廃物がたまりやすくなり、血液がドロドロになってしまいます。この状態では血液の働きが弱まり、各細胞も栄養不足に。
筋肉量の多い太もも、お腹、腰周り、お尻は血流も多く、しっかり温めると効率よく全身に血が巡るので積極的に温めましょう。肩、首もとや、血流の多い二の腕の裏側も温め効果が高い部位です。
また、手足の冷えが気になる時は、筋肉の多い部分を温めて血液を全身に巡らせるようにすると良いでしょう。
毎日の入浴
お風呂の温熱効果で体が芯から温まることで、血流やリンパの流れが促されます。また、湯船につかることで全身に水圧がかかるので、血行促進効果が期待できます。
交感神経を刺激すると血流悪化や冷えの原因となるため、副交感神経を優位にする38~40℃くらいの温度で入浴しましょう。全身浴では最低10分、半身浴では30分程度。血行促進作用のある入浴剤や血流を促す作用のあるアロマオイルを使い、さらに効果を高めるのもおすすめです。
首や肩、腰など、血流が悪くこりやすい部位は、少し熱めの温度でシャワーを当てると、血流改善だけでなく痛みの緩和にもつながります。
入浴後は体を冷やさないように気を付け、リラックスした状態のまま30分以内には就寝するようにしましょう。
ストレス解消
自覚症状はありませんが、実はストレスや緊張を感じることでも血流は悪くなります。ストレスを解消し、リラックスすることで副交感神経の働きが活発になると、毛細血管への血流を調整する動脈が開き、血流がスムーズになります。
タバコや飲酒を控える
タバコに含まれるニコチンには身体を冷やす作用があり、血管を収縮させ、血流を悪くします。また、日常的な長期飲酒は血流を悪化させ血圧を上げることが研究によりわかっています。美や健康を維持するためには、これらの嗜好品は極力控えるようにしましょう。
おわりに
血流の滞りは日々の生活習慣に意識を向け見直すことで、改善できることがほとんどです。
血流悪化により起こる様々な不調をこれ以上増やさず、悪化させないためにも、まずは規則正しい生活を送ることから始め、美しく健やかな体を維持する血流美人を目指しましょう。